2009年、京都に開店したラムとウィスキーの専門店、ラム&ウィスキーさんの15周年記念ボトル。
下記案内コメントで2015年に当店と詰めたファーストボトル、Sloth 1(当時はザ・スロースとして発売:参考画像2枚目)についても触れられており当時を懐かしく思い出しました。70年代のデメラララムを詰めたい、という定元さんのご希望に「お気持ちは大変よく分かりますがモノがないのでカロニはいかがでしょうか、お薦めです」と持っていったことを覚えております。※当時カロニは出始めで今ほど注目されていませんでした。
ラムを取り巻く環境もこの10年で大きく様変わりしましたが、最先端を走り続ける定元さんに心からの敬意と尊敬の念をこめて、心よりお慶び申し上げます。15周年本当におめでとう御座います。今回、記念すべきボトルをお取り扱いさせて頂いた信濃屋さんにも心より感謝申し上げます。ありがとう御座います。
まだわたくしもテイスティングできておりませんがこの10年でカロニがどう変わったのか、時の流れに思いを馳せながらどちらかのBARで頂きたいと思います。今からその時が楽しみです。このボトルをお手に取られた皆様にも心地よく素敵な時間が訪れますよう祈っております。
<ラム&ウィスキー 定本氏コメント>
ラムを飲み始めたのは1990年代半ば、ブリストル・スピリッツ社のジャマイカンラムの衝撃からでした。ファンキー、エステリーという用語も知られて無かった時代、その香味の鮮烈さは驚きでした。毎月営業の方が持ってきてくれた紙媒体の広告で紹介される未知の国々のラムは全て違う味わいで、“シングルモルトのように愉しめるラム”という同社のコンセプトに魅了されました。
時は流れ、自分でラムとウイスキーの専門店を始めて10年が経ち記念ボトリングの樽を探して渡英した際、まず浮かんだのはブリストル社。しかし訪れたブリストル港のラム貿易はもはや廃れ、伝説的なラムが眠っていた同社の歴史ある熟成庫も郵便局の倉庫になっており、熟成樽は全てリバプールに移されていました。
幸運にも翌日のロンドンラムフェス事前ミーティングで敬愛する代表のジョン・バレット氏にお会いして、いくつかラムのサンプルをご提案していただき感激しました。諸事情によりその時の企画は実現せず残念でしたが、今回15周年にあたり信濃屋の秋本さんに御協力いただき念願のブリストル社からカスクストレングスのカロニをボトリングできました。感無量です。皆様に感謝いたします。
2015年、失われた70年代のデメララの樽を探していた私は代わりにと提案されたカロニ1997の品質に驚き、最初の当店向けプライベートボトリングに選びました。“Sloth 1”です。その後ナマケモノのモチーフは当店のアイコンになりました。時は流れ、カロニも閉鎖蒸溜所の宿命か高騰し、また熟成が深くなるにつれやや樽の影響が強くなり私好みの瑞々しさからは変容したより重厚な香味になっていきました。
今回秋本氏よりご提案いただいた原酒は長期熟成の複雑な香味を持ちながらも過熟感無く非常に瑞々しく、焼けたゴムや焦がした砂糖のようなフレーバーが極端に少ない、まさに私の愛したカロニのマスターピース(傑作、名作)のような一本になりました。
美麗なラベルとブリストル社ならでは愛らしい瓶形と共に是非皆様のお手元にお置きくださいませ。ラベルイラストは上野渉氏の“Sloth 1”より題字は喫酒幾星の織田浩彰氏にお願いしました。両名に感謝です。
<ラム&ウィスキー 定元学氏:テイスティング>
香り:シロップ漬けの黄桃の甘さとドライアプリコットの酸。熟した洋梨。わずかに金木犀、ヘザーハニーのアクセント、ドイツ系ボトラーの中熟ハイランド・モルト、もしくはマルティニーク島のラム・ヴュー・アグリコールのよう。徐々に湧き上がるバナナと潮風、白木の爽やかさ。
味 :アプリコットブランデーと極少量の海水を入れた特級キームン(世界三大紅茶)、舌をおおう上質なオリーブ・オイル、樽由来の程よい苦味が全体を引き締める。
余韻:シロップの甘さと上品な木の渋みが長く続く。